Project detail
作品解説
朝、起き抜けに鏡を見る。いつもと同じ顔。明るくなりすぎないように洗面台の隣にある風呂場の照明で照らす。 鏡の歴史は古く、人の歴史とさして変わらないと言われる。今や、鏡が不思議な 力を持つ世の中でなくなって久しいが、金属鏡は少しだけその面影を残している。鉄板の表面を研磨して鏡面に近づけていく(番手をあげて少しずつ)。一般的な硝子の鏡と金属鏡が違うのは、“映らない”から“映る”へ研磨によって次元を移動する点にある。研磨という行為を通じて”あちら側”へ通ずる事ができる。 また、鏡は宗教的モチーフとして光に例えられる事も多い。金属は様々な処理によって多種多様な光沢を発するが、光沢は映し出す像を加工し変容させる。例えば、鉄に亜鉛メッキをして有色クロメート処理を施すことによって表面が虹色に輝く、鏡面に磨かれた鉄は虹色ごしに人の姿を映す。 それは道具としては曖昧で不正確な鏡だが、そのことが別の何かとの通路を開いてくれる。”道具”とは本来そのようなものであったと思う。
Information
矢津 吉隆 個展
『Mirror, Tool, Border / 鏡、道具、境界』
会期:2016年11月15日(火)~11月27日(日)
会場:artspace NIJI
制作協力:株式会社TANK
1. “ 鏡 ACM_CCCC”
2016 鉄を研磨し有色クロメート処理
2. “ 鏡 ACV_CCCC”
2016 鉄を研磨し有色クロメート処理